今現在(3月23日朝10時 カナダ エドモントン)のデータでは、すでにイタリアで計5476人が亡くなり、中国での死者数をはるかに上回っています。カナダでは1432人が感染し20人が亡くなり、数としてはイタリアやイランなどと比べては格段に少ないですが、新しい患者数などや政府の対応についての状況は日に日に変化し、多くの人が不安を感じています。大学機関や多くの企業が自宅勤務に移行しているように、私も金曜日から自宅でできる研究作業をしています。
COVID19についての情報が溢れかえっている今、信用できる事実、科学的にまだ解明されていないこと、そして、私達ひとりひとりが今すべきことをまとめてみました。ダークで悲惨なニュースばっかりな毎日だからこそ、事の重大さを踏まえつつ、前向きにできることを考えてみましょう。
このトピックについて、ここで触れていない側面がいっぱいあります。そこで、英語ですが、COVID19についていくつかの頼れる情報源をブログの最後にまとめておきました。
現在わかっていること
- COVID19のウィルスはSARSを引き起こしたウィルスに比べ、増殖スピードが早くより効率的に拡散する。
- つい最近のドイツの研究によると、SARSのケースではウィルスRNA(増殖に必要な遺伝子物質)の数がピークに達するのに7-10日間かかったのに対し、9人のCOVID19患者の観察に基づくデータでは5日以下であった。そしてピーク時のRNAの濃度はSARSの場合よりも1000倍高いという結果が出ている。
- 人との物理的距離をおくこと、隔離することは効果的。
- 英語圏では、”ソーシャルディスタンス(Social distance)” という言葉が、感染を防ぐために最低2メートル程度の距離を他の人とるという意味で使われています。
- 各国の感染者増加傾向のグラフ や 社会的距離のシミュレーション で見られるように、感染している可能性のある人と一定の距離を保つことは感染者数拡大を防ぐ上でとても重要です。
- 感染している場合、たとえ症状がなくても、喋るだけでも、他の人に伝染る。
- ただ喋るだけでもウィルスを含む微小な滴が拡散し、近くで呼吸をしている人に伝染る可能性があることがわかっています。
- COVID19の症状が出るまでには平均して5.1日かかります。たとえ症状がなくても、どんなに若くても、誰でもウィルスの運び屋になれます。
- 高齢者や、高血圧・心臓病・糖尿病など基礎疾患を抱えてる人は重症化の可能性大。
- 中国でのケースに基づくレポートによると、 致死率は60代以上から急激に高くなっています。
- しかし、若年層や中年層が重症化する例も多く報告されています。
- アメリカで入院している人についての報告では、およそ入院が必要だと認められた40%の患者さんは20歳から54歳でした。
- 嗅覚や味覚の減退、又は消失が30-60%程度のウィルス感染者に見られる - 咳などのCOVID19に見られる症状がなくても、嗅覚や味覚の減退がCOVID19の早期サインであることがイタリア、韓国、ドイツの多くのケースで見られている。
- ヒトコロナウイルスは、金属、プラスチックやガラスなどの表面で 最長9日間程度 生存できると思われる。[1]
- この報告は実際のCOVID19のウィルスを用いて実験したわけではなく、似ているウィルスに関する22件の研究結果に基づくものですが、生存率は似通っていると言えます。
- ウィルスは、下記のいづれかの溶液を使って1分程度で消毒可能。
- 62-71% エタノール
- 0.5% 過酸化水素(オキシドール)
- 0.1% 次亜塩素酸ナトリウム (ブリーチ)
まだ解明されていないこと(でも科学的研究により明らかになりつつあること)
- 重篤化する要素
- 主に高齢者に見られるが、一部の若い患者でも サイトカインストーム が起こりうる。
- サイトカインは免疫細胞と炎症誘発物質で免疫機能の一部ですが、その放出が過剰になることで、ウィルスだけでなく自身の細胞にもダメージを与え、結果、肺炎・呼吸困難・臓器障害などに繋がる状態 [2]
- なぜ男性のほうが重篤状態になりやすいのか (一部では男性の死亡率が2.8 %に対し、女性は1.7 %というデータが出ている)。
- 理由の一つとして、ウィルス結合に使われるレセプター(ACE-2レセプター)の遺伝子がX染色体のみに存在していることが示唆されている。女性の場合、X染色体が二つあるため、一つ代わりがあるが、男性は一つしかないのでそうはいかない。
- SARSを引き起こしたウィルスに見られたように、ホルモンの違いによって死亡率が変わってくる可能性がある。[3]
- 主に高齢者に見られるが、一部の若い患者でも サイトカインストーム が起こりうる。
- 私達の免疫システムがCOVID19のウィルスにどのように反応しているのか。
- これを解明することがワクチンの製造のために必要。
- カリフォルニアの研究チームが 公共データとバイオインフォマティクスを用いてウィルス認識に用いられる可能性の高い部位を発見した。[4]
私達ひとりひとりができること
- 助け合いましょう (例・トイレットペーパーを分かち合いましょう)
- 人との物理的距離をとって家にこもることは、孤独なことです。ほぼ世界中の人が、失業や将来的な食料配給や長期的な福利厚生について不安を募らせています。あなたは一人ぼっちじゃありません。 こんな時だからこそ、家族や連絡をとっていなかった友だちにメッセージを送り、電話で話しましょう。他の人と距離を保てる環境で、外に散歩に出かけましょう。 - 私の住んでいるエドモントンでは、高齢者や疾患を抱える人たちに代わって食料品や薬を買いに行くよ!とボランティアしている人たちがいます。知らない人たち同士でもです。トイレットペーパーをまとめ買いしている場合ではありません。
- 『幸せ』とは何か 世界幸福度報告から学びましょう
- どれだけ国民が自分たちの生活に満足しているかということに基づくランキングで、フィンランドが3年連続で世界一幸福な国にランクインしています。
- その理由は、フィンランドの人たちが周りに厚い信頼をおき、お互い助け合ってきていることが一番の理由だと言われています。
- 経済的な裕福さよりも大切なことはたくさんあります。
- 知識と頼れる情報を共有しましょう - 私の働く研究所が閉まる前に、同僚がプログラミングを勉強する資料をたくさん共有してくれました。経済的にも先行き不透明な今だからこそ、持っている知識をシェアして将来に備えましょう。
- 人混みを避けましょう
- できる限り在宅勤務しましょう。買い出しに行かなくては行けない時は、ピーク時を避けましょう。
- 外に出かけた後は手をよく洗いましょう
最後に
ほぼ毎日のように、カナダ・アルバータ州の最高医療責任者であるDr. Deena Hinshaw がアルバータ州でのCOVID19ケースや医療機関に関する情報を発表しています。彼女の3月19日のコメントが一番大切なことを集約しています:
ウィルスに感染する多くの人たちが軽い風邪や数日間の発熱だけで終ることは確かです。しかし、もし彼らが他の人を感染させた場合、感染の連鎖が 死や、集中治療室や入院へと繋がります。私達全員が協力しなければなりません。そしてこのウィルスを甘く見てはいけません。
頻繁にアップデートされてる資料
-
COVID19についてのオンラインコース: “Science Matters: Let’s Talk About COVID-19” by Imperial College London
-
人との距離を置くことが最悪の事態を防ぐ上でどれだけ大切か、かなり詳細に書かれたブログの日本語訳: コロナウイルス:今すぐ行動すべき理由
-
ポッドキャスト: Science VS (研究者や医療従事者とのインタビューが頻繁にアップされています)
参考文献と写真のcredit:
[1] Kampf, G. et al. Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents. Journal of Hospital Infection, Volume 104, Issue 3 (2020): 246-251.
[2] Metha, P. et al. COVID-19: consider cytokine storm syndromes and immunosuppression. The Lancet, (2020) doi:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(20)30628-0
[3] Channappanavar, Rudragouda et al. Sex-Based Differences in Susceptibility to Severe Acute Respiratory Syndrome Coronavirus Infection. Journal of immunology (Baltimore, Md. : 1950) vol. 198,10 (2017): 4046-4053.
[4] Grifoni, A. et al. A Sequence Homology and Bioinformatic Approach Can Predict Candidate Targets for Immune Responses to SARS-CoV-2. Cell Host & Microbe, In Press, (2020)